鬼の石段
上宮から中宮へ通じる約850段の石段を「鬼の磴」=鬼の石段と呼んでいます。そして、鬼がつくった石段だから丈夫で、これまでに一度も壊れたことがないなどと言われます。
*昔、犬ヶ岳には8匹の鬼がいた。村におりてきては、乱暴の限りをつくす。里の人からの訴えを受け、求菩提の権現様が一計を案じた。さっそく鬼どもを呼び集め「夜のうちに上宮と中宮との間に石段をつくれ。もしダメなら、夜の明けぬうちに犬ヶ岳から出てゆけ」と。「追い出されては大変だ」と、鬼たちは一所懸命に石段づくりにとりかかる。作業は快調に進んで、夜明けにはまだほど遠いというのに、石段ははやくも完成にちかい。そこで、慌てた権現様は、手に持っていたタコロンバチ(笠)を二つバタバタと叩きあわせて、鶏の羽音を真似、「コケコッコー」と鳴いてみせた。すると、夜が明けたと勘違いした鬼たちは、大急ぎで山から逃げ出したのだという。