ワークシートについて
相良悦子(求菩提資料館学芸員)
 2006年度から当館では小・中学校の夏休み期間に子供向のミニ企画展を行っている。当館は修験道専門の資料館であるが、子供たちに修験道を理解してもらうのはなかなか難しい。資料館から少し上ったところにキャンプ場があり、夏休みは子供たちの声が響いているが、資料館に立ち寄る子供たちはごく少数である。そこで修験道に興味のない子供たちに少しでも資料館を知ってもらおうと、ミニ企画展を行うこととなった。ミニ企画展は子供たちが興味を持てるような、修験道と全く関係のないテーマで展示をし、さらに資料に自由に触れることができるなど、今までの当館では行わなかった取り組みをしている。またその中で、ワークシートの配布を試みた。
 ワークシートとは質問等が書かれた紙のことで、子供たちが展示を見る際のヒントになったり理解の手助けになったりする役割があり、今日、多くの博物館・美術館で取り入れられている。
 各館で様々な工夫を凝らしたワークシートが作られているが、『生涯学習と博物館活動』の中で、大堀哲氏はワークシート作成のポイントを4つ挙げている。それに共感するところが大きく、当館がワークシートを作成する際、それを参考に以下のことに気を付けた。
1.展示のテーマに沿った質問事項を作る。
2006年は「昆虫を通して自然環境について考える」、2007年は「親子のコミュニケーションをはかる」、というテーマを設けた。そのテーマから大きく外れず、かつ押しつけがましくならないように設問に気を付けた。
2.子供たちが読みやすい文章で、かつ親しみやすいような語調にする。
設問の文章も理解しやすいように心がけ、また「〜はどうなってるかな?」「〜を考えてみよう」など、子供たちに話しかけるような語調にした。
3.いかにも「テストを解く」という感じにはならないようにする。また答え合わせをしない。
答え合わせをする博物館もあるが、当館では答え合わせをしなかった。「正解」を求めず、また「正解」のない質問もあるからである。そのかわり、参加者全員にワークシートをする上でヒントとなる部分を載せた、当館が独自に作成した展示解説の小冊子を配布した。
4.○×方式や穴埋め方式は最小限にとどめ、自分で考えたり、人から話を聞いたりしてわかったことを文章で書くという方式にする。
子供たちにとってじっくり考え、文章をまとめるようなことは「面倒なこと」で、避けたがる傾向がみられる。そこでこの機会にそのようなことに取り組んでもらおうと考えた。
 その他、何か参加賞があった方がワークシートの参加率が上がるだろう、ということでささやかであるが展示のテーマに関係のあるような参加賞を準備した。
 来館したこどもたちに自発的に取り組んでもらうということにしたため、実際どのくらいの子供たちが参加してくれるだろうかと心配であったが、かなりの数の子供たちが取り組んでくれた。親子で熱心に取り組む姿もみられた。
 しかし、ワークシートを1種類しか作成しなかったため、小学校の低学年と高学年が同じワークシートをすることになってしまった。振り仮名をつけるなどの配慮はしてあるが、低学年には難しいという声も聞かれた。これは今後の課題である。
 博物館の展示をどうのように見るかは見る側の自由であり、博物館の考えを押し付けるのは好ましくない。しかし展示をし、見られる側の博物館としては当然展示をした意図があり、それを感じ、何かを得たり発見したりしてくれれば良いと思っている。ワークシートをすることにより、子供たちは受動的ではなくより積極的に展示を見ることができるのみならず、ワークシートを通して、博物館は展示の意図を伝えることも可能なのである。

【参考資料】
「生涯学習と博物館活動」 雄山閣 (1999年)
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